山と酒と音と飯

登った山と飲んだお酒と聴いた音楽と食べたメシについての備忘録

槍ヶ岳は山レベルでどの辺りの立ち位置なのか

こんにちは。

 

恋する夏が行く悲嘆に暮れています。私です。

 

今回は、この夏に登った槍ヶ岳のお話をさせて頂こうと思います。

皆さん、槍ヶ岳って山、ご存知でしょうか?

恐らく山やらない人からすると

「あ、ああ〜!槍ヶ岳ね!うんうん...( ◜◡‾)(‾◡◝ )??」

ぐらいの感じの山だと思います。

山やってる、もしくは興味ある人にとっては

「うお!槍行ったの!槍!良いなあ!良いねえ!どうだった?どうだったの?ねえねえ!教えてよ教えてよおーしーえーてーよーーーーー!」

って、ぐらいの感じの山です。

好きな人とそうでない人で、かなり温度差のある山の一つですね。

 

簡単に紹介させて頂きますと

槍ヶ岳(やりがたけ)は、飛騨山脈北アルプス)南部にある標高3,180mである。山域は中部山岳国立公園に指定されており[2]日本で5番目に高い山である。長野県松本市大町市岐阜県高山市の境界にある。初登攀は中田又重郎と修行僧の播隆上人。日本百名山[3]新日本百名山[4]及び花の百名山[5]に選定されている。通称「槍」。wikipediaから引用)

と書かれております。

また

名前の如く天に槍を衝く形が特徴的な高山であり、その形から「日本のマッターホルン」とも言われる。登山者でにぎわい、穂高岳などと共に多くの登山者の憧れの的となっている。深田久弥は、『日本百名山』の中で 富士山槍ヶ岳は、日本の山を代表する2つのタイプである。(中略)一生に一度は富士山に登りたいというのが庶民の願いであるように、いやしくも登山に興味を持ち始めた人で、まず槍ヶ岳の頂上に立ってみたいと願わない者はないだろう。

すなわち、登山をしない者にとって日本を代表する山は富士山だが、登山を愛好する者にとってのそれは槍ヶ岳である、と述べている。

(wkipediaから引用)

とも書かれております。

 

ざっくり言えば、好きな人にはたまらない山ってことですね⛰

とにかくまあ、山の形が独特で綺麗な形をしているのですよ。

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北アルプスのやや奥まった位置にある故、関東からの日帰りは難しく、最低1泊2日はかけなければならない山なのです。

 

アプローチするルートは幾つかあるのですが、今回は中房温泉登山口から入り、2泊3日で槍ヶ岳の頂上を目指す、通称「表銀座」ルートで登頂を試みました。

 

このルートは燕岳〜大天井岳槍ヶ岳と、3つのピークを超えて行く、全長38kmの、起伏に富んだナイスコースであります。

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と言うことで、8月10日〜12日の3日間かけて、テント泊で登ってまいりました。

 

1日目 中房温泉〜大天荘

初日は中房温泉から入り、燕岳頂上付近を越えて大天井岳頂上直下、大天荘テント場までを目指します。

 

このルート、はっきり申し上げまして、この初日の中房温泉〜燕山荘〜大天荘の行程が体力的にはクライマックスです。一番辛い。とにかく辛い。

思わず下山を試みるぐらいに辛い。

中房温泉(1,450m)〜燕山荘(2,704m)の登りが、片道約4㎞で高度を1,254m上げる訳です。

これはどれぐらいのものなのか例えると、新宿駅〜渋谷駅間(4.1㎞)の移動距離で東京タワー3〜4つ分の高度を稼ぐのと同じぐらいと言う感覚です。

結構ハードだと思いません?

 

実際、ハードなんです。

 

序盤では、アルプスの天然水汲み放題と言うボーナスステージがあるので、ここで水を補給しつつセーブしつつ、ゲームオーバーになったら、戻って来れます。(来れません)

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途中の合戦小屋でスイカを頬張りつつ

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燕山荘到着。この時点でライフは結構削られています。今回は素通りしていまいましたが、この燕山荘から行ける燕岳も、花崗岩の白砂と独特なフォルムが美しい、大変に良い山なのです。

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この表銀座ルート、体力に自身のない方でしたら1泊目はこの燕山荘に泊まり、3泊4日で目指すのもありなルートです。

 

しかし、そこは体力とヤル気を押し出して行きたい我々。ここからさらに3時間40分かけて、大天井岳頂上直下、大天荘テント場を目指します。

 

とは言え、既に燕山荘までの登りでHPを削られていた我々、そこから一度高度を落として登り返すのがシンドくてシンドくて・・・

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 (↑この奥の山のてっぺんの左側、平らな所に僅かに見える四角いのが大天荘)

 

これがFFやKOFなら、絶対に超必殺出せてるぐらいのライフ残存度です・・・

 

思わず大天荘見えた時に

「うおおおおおおおおおおおお!」

と同行のメンバー全員歓喜の咆哮を出しました。

筆者が今年1番感動した瞬間です。

本気で涙が出そうになりましたね(☍﹏⁰)

 

後ろの女性グループの方々に、後ほど

「歓声が聞こえたので、もうそろそろ(着くの)だと思いました。」

と言われました。

すみません、声デカかったすね・・・

 

本命の槍ヶ岳はまだまだ先ですが、このテント場で2,870mですから、結構な高度です。

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テント張って夕食作って午後7時に就寝。翌日は3時起きです。

 

ちなみに私がメインで使っているテントは、アライテントのエアライズ1です。

 

 

 

 

 

 本体、フレーム、フライ合わせて合計重量1,360g。

重さは1人用山岳テントとしては平均的な所ですが、設営のしやすさと作りの頑強さからかなり気に入っています。

ポールが、片方側だけ差し込めれば固定できると言う点で、モンベルのステラリッジよりも設営のしやすさにおいて秀でています。

 

遊び心は少ないですが、質実剛健と呼ぶに相応しいテントです。最近は、1人で泊まるときはだいたいこのテントです。

 

 1日目 総所要時間9時間10分

 

2日目 大天荘〜槍ヶ岳山頂〜殺生ヒュッテ

午前3時起床。

朝食をフリーズドライのチャーハンとパスタで手早く済ませ、テントを撤収し、午前5時に出発。

 

テント泊の場合は特にそうなのですが、起床から出発まで2時間見ておくと丁度良いです。

インスタントとは言え、飯を作って撤収作業やってトイレ行ってとやっていると、だいたい2時間はかかります。

なので、山の朝は3•4•5(3時起床・4時食事・5時出発)か、4•5•6(4時起床・5時食事・6時出発)が一般的です。

 

さて、本日はまず大天荘から30分ほど歩き、大天井ヒュッテへ到着。

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この2,700m辺りが、この辺りの山域の森林限界線のようで、ここを境に植生が大きく変わります。ここからは2,500mまで一度高度を落としながらヒュッテ西岳を目指します。

 

この時期は夏ということもあり、藪が生い茂っています。

岩岳までの辺りの樹林帯は、ひたすら顔まわりを、虻とも蠅とも分からない羽虫がわんわん飛び集って来ます。

虫嫌いの人だと発狂するレベルなので、発狂しないように注意しましょう。下山後の人生に黒歴史が1ページ加わります。

 

比較的虫好きな私でも結構不快でした。立ち止まると、なおのこと集られるので、ひたすら歩いて振り切ります。

この時、同行者のマル坊が持参していたハッカスプレーが結構効いて、羽虫が近寄って来なくなったので、樹林帯を歩くときは私も持参しようと思いました。

 

 人間にとっての臭いとしてはそんなに不快ではないので、良い感じです。

 

岩岳を越えて西岳を通過し

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水俣乗越からヒュッテ大槍までの区間が本日の核心部・東鎌尾根です。

鎌尾根と言う名に相応しく、両側が切り立っていて、ハシゴ、鎖の急峻な登り下りが連続する、やや難解なポイント。

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注意しながら進めばすごく危険と言うこともないので、慎重に進みます。雨が降って岩肌が滑り出したら難易度がかなり上がるだろうなと言う印象を受けました。

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そんなことを繰り返しているうちに10時30分、ヒュッテ大槍に到着。ここまで実に5時間半。

 

そしてこのヒュッテ大槍、利用者はそこまで多くない山小屋なのですが、酒に対する力の入れようが素晴らしかったです。

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黒生なんて誘惑があるのと同時に、なんとマッカランやらラフロイグと言った、スコッチ系のウィスキーも置いていてくれていたのです。

もう、最高ですね!

2,800mの高所でアルコール入れると、あっと言う間にキマって頭が痛くなる私は飲みませんでしたが、こんな良い環境でラフロイグ飲んだら最高だろうなー!

とよだれ垂らしながら断腸の思いでヒュッテ大槍を後にしました。

ウィスキー党の方は、北アルプス泊まるならヒュッテ大槍で決まりです。

 

ここから先は槍ヶ岳の頂上の雄々しい姿が眼前に立ちはだかります。

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ここから50分ほど登ると槍ヶ岳頂上直下、槍ヶ岳山荘に到着します。

今夜はここのテント場に泊まろうと思っていたのですが、12時40分の時点で、まさかのテント場満員_(:3 」∠)_

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荷物を槍ヶ岳山荘前に置き、頂上を目指します。

片道30分程度の登りなのですが、これがなかなか怖い。この行程で1番の傾斜。

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と言うよりほぼ直登。滑って落ちると人間やめたくなるレベルの高さなので慎重に登って行きます。

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高所恐怖症の方には厳しいかもしれません。

山頂は30~40人もいたら満杯で身動きが取れなくなるぐらいの広さです。

山の日と言うこともあって、なかなかの賑わいでした。

そして引き続き慎重に下り

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槍ヶ岳山荘に無事戻って参りました。安堵のビールが旨過ぎて地に倒れ臥す面々。

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しかしテント場が満杯のため、ここから20分ほど下り、殺生ヒュッテ(2,860m)テント場にテントを張ることにしました。

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こちらの方がテントスペースは幾分余裕があります。

誘惑に負けて350ml缶ビールを空けたら案の定、翌朝少し頭が痛かったので、やはり高地での飲酒は人体に悪影響を及ぼすと言う事を再々々々確認しました。

 

2日目、全行程10時間40分。

 

3日目 殺生ヒュッテ〜上高地バスターミナル

 

最終日、若干の頭の痛みで目が覚め、2時30分起床。他のメンバーも私と同じ量の飲酒をしたのにピンピンしていました。

アルコールの許容量と高山病にはかなりの個人差が出ると言う学びがあります。

この辺りは、2,000mより上で支障の無い程度に試して己の体に問うてみるしかないです。私は高地だとけっこう弱い方だと思います。

 

さて撤収もスムーズに終わり、4時38分に殺生ヒュッテを出発。ガレ場を下りながら日の出を迎えます。尊い👏👏

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何度山をやっても、この日の出の瞬間は毎回息を飲みます。天候と山域で、様々な表情を見ることができます。

 

本日はひたすら下るだけなので、体力的には問題ないのですが、2日分のダメージが足に溜まっており、足裏の筋全体が炎症を起こす足底腱膜炎を久しぶりに発症していまいました。我慢できないほどではないですが鈍く痛い。1歩1歩鈍く痛い。心を無にしてひたすら下ります。

 

時折、雪渓の上を歩きながら下って行きます。アイゼンは必要ない雪量ですが、いかんせん超滑ります。慎重に。

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この日が土曜日だった事もあり、こちらのルートで登って来る人もかなり多かったです。

 

表銀座も相当にキツいけれど、こちらもひたすらガレ場を蛇行して登って来るのだからキツいだろうなあ。

 

8時5分、槍沢ロッジに到着。ここまで来るとほとんど道は平坦。

ここに泊まって頂上をピストンする方もいらっしゃるようです。

しかも美味しい水が汲み放題。素敵。

 

しかしこの山行の行程、私が休憩時に何飲んでたかと言うと、ひったすら山小屋でコーラ買って飲んでいました。

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下界だと殆ど飲まないのですけどね。コーラ。

旨過ぎて旨過ぎて良く分かんない量飲んでいました。

甘みと清涼感が完璧過ぎましたね。

 

日本人で唯一世界の8,000m峰全14座を登頂した登山家・竹内洋岳氏も

「どんな山にもコーラだけは必ず持って行く」

と、クレイジージャーニー出演時におっしゃっていた意味が漸く分かったような気がします。山ではコーラです。

山で疲れて来ると、考えがどんどん削ぎ落とされて行って、最終的に

 

「疲れた」

「休みたい」

「コーラ飲みたい」

 

ぐらいしか考えることが無くなります。

この雑念が削がれて行く感覚も山の面白さではあるのですけれどもね。

 

徳沢で休憩を挟みながら

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あとは平坦な道を延々と歩いて行きます。

 

そして13時24分、上高地バスターミナルに到着。

なかなか疲れました。

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3日目 全行程8時間46分

 

3日間の合計

移動距離38.6㎞

所要時間55時間13分

最高高度3,180m

消費カロリー9,961kcal

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と言うような運動強度でした。

無事に下りられた事に感謝。

 

 

この槍ヶ岳、山レベルではどれほどの所なのかを考えてみましょう。

私自身ちゃんとした岩稜帯をやるのはこれで3回目ですが、そんなに無理なく登れました。

強いて挙げるなら槍ヶ岳頂上直前の直登が少し危なかったですが。

バリエーションルートやアルパインライミングを除く、一般登山道のレベルでの話ならば、技術面での難易度は中の上と言った所でしょうか。

体力面で言うと、この表銀座縦走路は割と激しい部類に入るかと思います。なにより初日の燕山荘〜大天荘の登りが本気でキツい。

ある程度トレーニングしてはいても、キツいものはキツい。今回荷物は18kgだったので、一般的な夏場のテント泊装備ぐらいの重量です。いやーキツかった。鍛え方が足りません。

 

と言うような事を踏まえて、無雪期のみで考える中で

 

高尾山

技術:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆

体力:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆

を基準値として考えて

 

槍ヶ岳表銀座縦走路

技術:★★★★★☆☆☆☆☆

体力:★★★★★★★☆☆☆

 

と言った所でしょうか。

 

 

初心者の方にはまず絶対にオススメしません。装備も体力もしっかり整えてから臨んで下さいと言います。

 

「連れってって〜」

と言う方も連れては行けません。他人に意志を委ねるのではなく、自分の意志で来れる方は是非来て下さい。

 

ある程度経験積まれた方なら、そこまで危ない所もないので、強い雨が降っていなければ十分に楽しめる良いコースだと思います。

 

テント泊でやられるのであれば、雲取山甲武信ヶ岳大菩薩嶺金峰山、涸沢等を数回こなした上で臨まれれば、すんなりと楽しめるかと思います。

 

私は、アルプスは今シーズンはこれで終わりなので、雪が降るまではもう少し低めの山を散策して楽しもうと思います。

来年、再来年辺りで、体幹とバランス感覚を鍛えた上で、もう一つ二つ上のランクの山にも挑みたいですね。

 

それではまた🏔🗻

 

写真協力: K.maruyama