山と酒と音と飯

登った山と飲んだお酒と聴いた音楽と食べたメシについての備忘録

年の瀬ハギス考察

皆さまもご経験あられるかも分かりませんが。

 

超鮮度の猪の内臓を戴きました。

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JINZO.

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KANZO.
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SEISO.
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Hi!
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血が滴るぐらいにプリンプリンです。

経験則からすると、どんなに鮮度が良くても腎臓がかなりヤンチャな臭いを放つのですよね。

肝臓とも腸とも違った腎臓独特なスメルを。

 

アレをどう対処するかで今回の調理における成否がかかっていると言っても過言ではございません。

 

こんな良い食材を手に入れる機会もそうそう無いので、先人達の知恵と知見をお借りする事にいたしましょう!

 

と言う事で、今回はスコットランドの伝統料理「ハギス」を作ってみる事にいたします。

 

そもそもハギスとは?

茹でた羊の内臓(心臓、肝臓、肺)のミンチ、オート麦、たまねぎ、ハーブを刻み、牛脂とともに羊の胃袋に詰めて茹るか蒸したプディング(詰め物料理)の一種である。さまざまなバリエーションが存在し、内臓は主として肝臓が使われるが、心臓や腎臓を使う場合も多い。近年では胡椒などの香辛料を使うことが一般的となっている。

 

Wikipediaより抜粋

 

まさに今回の素材にうってつけの料理となっているのです。

 

日本でも、アイリッシュパブとかで食べることができるけど、なかなか頼まない灰色の塊のアレです。

 

かく言う私も食べた事はありません。

いくつかのレシピサイトを参考にさせて戴きながら再現してみようと思います。

 

が、その前に、素材の味を確かめておきましょう。

 

腎臓の断面。

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パッと見た感じは肝臓とあまり差は無さそうなのですけどね。

 

肺の断面。
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軟骨が入っており、これが気道なのだと目で見て納得です。

 

精巣の断面。
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玉ヒュン事案🌕🌕

 

シンプルに焼いて食べてみます。

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左上から肝臓、精巣、肺、腎臓。
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肝臓は安定の旨さ。流石は超鮮度。敢えてハギスにしなくてもこのまま焼肉で食べるのが1番旨いかもしれません。最高。なんでハギスにするのだろうか。

 

精巣は意外にもクセはほぼ無く、フワフワした肝臓や脳味噌と言った感じの味わい。思っていたよりも旨いです。

 

肺は焼いてしまうとクセは余りなく、素直な味わいです。静岡おでんに入っている様なフワフワ感はそこまで感じられないですね。

 

腎臓もこれぐらいの量であれば、あの特有の腎臓臭はほとんど気にならなく、ちょっとベクトルの違う膵臓脾臓かな〜?と言った味わい。

 

いずれにしても鮮度の良さに感謝👏👏

 

さてハギス作りを続けて行きましょう。

 

先ずは内臓㌠を下茹でして血を抜きます。

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なかなかのアク。
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内臓!茹で上がってる!って感じです(語彙力)
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内臓を細かく切ります。

肝臓。

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肺。
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玉ちゃん。
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細切れ。
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細切れ。
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これぐらいの段階になると、だいぶ血が滴って来る事に加えて、臭いもまあまあ出て来ます。けっこう不安です。

 

続いてミンチにした内臓に混ぜ合わせる材料を用意します。

臭い消し要員。がんばれ!セロリ!やれるだけ!なんだかんだ言っても!

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後々作るつけ合わせ用のカブの残りの葉っぱも刻んで入れてしまう事にしました。あとはニンニク。
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飴色玉ねぎ。
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アンチョビ

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オートミール。しかもレシピでは内臓の茹で汁で戻せとの指示。正気か。
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これらを全てボウルに入れて。
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混ぜ合わせます。

塩胡椒も加えました。特に胡椒は親の仇の如くこれでもかと加えています。
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んーーーーー!割と臭い!この段階が1番シンドかったです。全く美味しそうに見えない。しかも臭う。主に腎臓。

 

胃袋の調達までしていなかったので、アルミホイルで蒸し上げる事にします。f:id:u_f_y:20211228125255j:image

ハギス原理主義団体からは「こんなんハギスぢゃねえ!」とド突かれそうですが、どうかどうかお許しください。あなた方はそうやってカリフォルニアロールも「こんなん寿司ぢゃねえ!」と言ってド突き回すのですか?我々の世代で哀しみの縛鎖を断ち切りましょうよ。

 

こうして1.5時間かけて蒸し上げました。
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無理してホイルに包まずとも、ボウルのまま鍋に入れてホイルで蓋すれば良かったのではと蒸し終えた後で思い至りました。次やる機会があったらそうします。

 

横着して内臓を包丁で砕いただけでは、だいぶ粒が大きかったので、慌ててフードプロセッサーを買って来て細かくしました。買うのをあれだけ躊躇していたのに必要に迫られると人間は強いです。

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このままだと若干水分が多くてユルかったので、少し炒めて水分を飛ばす事にしました。

 

こちらは、どこのご家庭にもある松阪牛の牛脂。

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これを使って軽く炒めます。この時点においても全く美味しそうに見えないので醤油を垂らして悪足掻きをします。

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ハギスが大方目処がついて来たのでソース作りに取り掛かりましょう。

 

これまた何処のご家庭にもある乾燥ポルチーニヤマドリタケモドキ)を水で戻しておきます。

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飴色玉ねぎと合わせて熱します。隠し味にシーバスリーガルを少々。

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黒胡椒。毎度の事ですが、レシピに書かれている適量の3倍が真の適量です。
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生クリームを投入。
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沸騰しない程度に煮込んでソースは完成。

 

つけ合わせを作ります。

茹でたジャガイモとカブ。
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それぞれ別々に生クリームを加えながらマッシュします。

 

盛り付けて行きましょう。

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この時点においてなお、全く美味しそうでありません。不安しか無い。

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プリキュアのお茶碗にハギスを入れて使ったの、先にも後にも日本では私ぐらいのものでしょう。

本場スコットランドでは2〜3人はいるとかいないとか。

 

最終的にジャガイモもカブも混ぜました。この辺に私の雑さが滲み出ます。

型抜きしたハギスの上に乗せ、グリーンピースをあしらって完成。

俯瞰
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側面

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な、長かった...此処まで5時間要した...家庭でやる料理ではない...

 

作ってる過程では全く美味しそうでなかったので、不安しかないですが、戴いてみる事にいたしゃぁしょう。

 

 

・・・

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・

 

 

 

 

え?

 

 

 

 

 

うーーーーーーーーまいい!!!

 

 

ハギスうーーーーまい!!!

 

 

 

えええええええええええええええ

 

クサうまだーーーーーーーーっ!!!!!

 

なんそれ!!!!!!

 

 

 

めっちゃ予想を裏切られたよもう!!!!!!

 

 

 

こんなことある?!?!?!?

 

 

 

一口目余りの旨さに脳みそが追いついて来なかったよもう!!!!!!

 

 

先ず、ハギス単体の感想!

これだけ食べても美味しい!

臭いと奥行かしさ2倍増しの粗いレバーペーストの様な味わいと言うのが1番近い。

 

やはり腎臓ならではの臭いはありますが、作っている途中に感じたほどの臭いではなかったです。

 

そしてこれをポルチーニソースと、ジャガイモとカブのマッシュと合わせるとさらに大化け!!

 

ポルチーニの芳醇な香りと生クリームがハギスの内臓臭を上手く丸め込んで旨味だけを綺麗に取り出してくれます!!

 

そして、マッシュがハギスとソースの強過ぎる味わいを巧みに中和して食べ易くしてくれると言うこれ以上に無い相乗効果!

 

これは旨いぞ...!料理としてのステージが著しく高い!

 

 

誰だよハギスを「不味い」とか「臭い」とか言ってるヤツ!!オレの中の、全スコットランド人が怒っている!!怒っているぞぉぉぉぉぉ!!!!😡👊💢🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿

オレの中のスコットランド人て誰だ!!!チャールズ皇太子Belle and Sebastianぐらいしか思いつかんが!!!つまり彼らだ!!!!

 

 

翌日、もう一つのソースを試してみる事に。

今回のソース㌠。

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シーバスリーガルを思いっきり注ぎます。隠し味ではなく、本命です。
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グレイビーパウダーをお湯で溶かしました。
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鍋にグレイビーソースを入れた後、トマトペーストを加えます。
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コンソメキューブ
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黒胡椒
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生クリーム
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味の焦点が少し定まっていなかったので、仕上げに少し酢を入れました。

 

ウイスキーソースのハギス完成!

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ソースだけだとウイスキーの苦味が割と出ていたのですが、マッシュとハギスと合わせると不思議と良い具合に均衡が図られていました。

 

ただ、個人的にはもうちっとトマト強めでも良かったかもです。

 

こちらのソースについては改善の余地はまだあると感じています。

 

さらにその翌日。

 

生クリームを切らしたので、ポルチーニの戻し汁と飴色玉ねぎに牛乳、バターを加え、

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みんな大好き、ケンコーマヨネーズ社のガーリックバターソースも追加。
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豆鼓も追加。
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砕きます。
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豆鼓も加えた後、クミンパウダーとガラムマサラを入れ、沸騰しない様に5分ほど煮込んで完成。
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ハギス ポルチーニ・クミンソースの完成!
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うーーーまい!!

やはり、この内臓臭にはクミンやマサラの様な強力なスパイスが良く合います。味変要員として超優秀。豆鼓を入れた事で旨味要素も底上げされました。

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200年前からあれだけ因縁の深かったイギリス×インド×中国が、見事日本の食卓でガッチリと手を結んだ瞬間です。やったぜ🤝🇬🇧🇮🇳🇨🇳

 

 

今回はこれで打ち止めですが、このハギスのタネを使ってメンチカツやパイ包みにしてもかなり美味しく仕上がると思います。

 

いや、前評判は悪評が連なっていましたが、やはり長きに渡って愛されるにはそれだけの理由があったと言う事です。

非常に手間がかかる為、現地でも家庭用と言うよりは飲食店で供される事の多い料理と言うのも大変に納得が行きました。

日本では材料調達のハードルも高いため、なかなか頻繁にはやれない料理ですが、また新鮮な内臓が手に入ったら、今度は胃袋も調達して完全再現を試みましょう。

 

元々ハギスは、スコットランドの食糧調達が厳しい生活環境下において、素材を余すところなく美味しく食べようと言う気概から始まったであろう料理の筈。今回、そのレシピを再現する事で、そう言ったスコットランドの地域に根付いた食材、時代背景、調理に対する考え方をなぞる、貴重な体験をするに至りました。

 

料理を通して未だ見ぬ地域の方々の考えに思いを馳せる事が出来るのは、なかなかロマンがあります。今後も、世界各国、各地域の伝統料理は隙あらば再現して行きたいと思います。

 

私、今まで実はマトモに洋食を作った事がなかったのですが、初めて作った料理がハギスと言うのは、なかなか脇道から入ったなぁと実感しております。

 

次の洋食は何作ろうかと考えた際に、クネドリーキ、ギヴェチ、アイスバインが真っ先に思い浮かんだのでやるかもしれません。ギヴェチとか日本語の詳細なレシピあるんかな🤔

 

年の瀬に「ハギスを作ろう!でもどうやって?」

と思われた方の一助になれば幸いです(ならんわ)

 

今回参考にさせて戴いたレシピ

 

 

 

 

 

それでは皆さま良いお年を💨