都市河川鯉とシュールストレミングについて
鯉釣りは冬に限る。
そう確信したのは残暑厳しい昨年の9月のこと。もともと鯉の旬は11月〜5月と言われているのもあり、冬場に釣るのが良いのは勿論なのですが、何よりも夏場の鯉がいるような川は、概して暑い上に藪蚊がいる事が多いので、冬場の方が釣り易い事この上ない訳なのです。
今回の記事は、昨年9月に釣り上げた後に世間の目に負けてリリースした都市河川鯉のリベンジマッチの顛末を記しています。
以前から都市河川の鯉が旨いと言う話は聞いており、虎視眈々とその機会を伺っていました。
そんなおりに、茸本氏から鯉釣りのお誘いを賜り、行って参りました。鯉釣りの本場・東京西部へと。
GO, WEST!≡≡≡≡c⌒っ゚Д゚)っ
やって来たのは閑静な住宅街と言う言葉がピッタリとハマるような地域。
河川の両サイドは見渡す限りの住宅、住宅、住宅、住宅。その間を縫う様に走る都市河川。
鯉に関しての漁業権の設定はない水域で、川に入ってダメな訳でもないのに高い柵で囲われて入り辛くなっているのは良くない事です。とても良くない事です。大事な事なので2回言いました。
とても良くない(; ・`д・´)
さて川を覗くと、浅い川底に鯉が沢山群れています。
おっし、釣るぞー!フィッシャーー!!
と、いそいそと準備を整えていた所、向かいの岸を散歩していた老夫婦がおもむろに食パンを川に投げ始めました。
あっと言う間に鯉が群がり、我々が釣り始める頃には鯉たちの食い気は全く無くなっていました🍞
( •́ㅿ•̀ )エーーー...
野生動物に餌あげちゃいかんぢゃろがい!愛護だと思ってんのかい!だから鯉みたいな国内外来種が蔓延るんぢゃろがい!!
我々の針先に掛けたパンには見向きもしてくれなくなった為、鼻息荒く移動し、再スタートを切る事にします。
そして途端に茸本氏が1匹目を釣り上げました。
さすが、都市河川鯉釣りに一日の長がある漢よ...
(満面の笑みの茸本氏)
その後、河川の中で唯一の錦鯉を発見した筋肉氏が、華麗なロッド捌きでその鼻先へとパンを落とし込み...
釣れたーーーーーー!!!
キレイ!食欲湧かない(๑´ڡ`๑)!
錦鯉を敢えて狙うと言う筋肉氏の攻め方もまた良し。
そして遅ればせながら私も無事に70〜80㎝クラスのヤマトゴイを釣り上げる事に成功しました。
それは鯉と言うには余りにも大き過ぎた
大きく重く分厚く
そして大雑把過ぎた
それはまさに岩間さまだった
(岩間さま)
岩間さまも魔神竜之介もそうですが、坂本龍馬が仲間でいると、かえって溜め技のチャージ時間が長くなるので不利なのですよね。
本丸前の小屋で人魂でレベル16まで上げきった後、おぼろ丸単独で遠方から忍法矢車草を連発した方が早く片付く気がします。
話を戻します。本当はその場で血抜きと内臓の処理までやって帰りたかったのですが、住宅街で刃物をチラつかせた中年男性㌠がメーター近い鯉を殺しまくる絵面と言うのは大変に通報案件で御座いますので、そのまま茸本氏の特大クーラーボックスに詰め込み、退散致しました。
これ電車で来たらどうすんだろうな。クーラーボックスの中でビッタンビッタン跳ね回る音がするから色々ダメだろうな。
車で安全に且つ迅速に持ち帰った念願の都市河川鯉。臭いのか、臭く無いのか。その実態は如何に。
早速、捌く事と致しましょう。
割と直近までは元気に生きていましたが、釣り上げてから5〜6時間経った為、捌く段階ではさすがに絶命していました。
デカ過ぎてまな板の上に乗らないので、シンクの中で捌く事にします。
シンクの中だと大振りの包丁が使えないです。否応無く金切り鋏と上州屋で買った小型ナイフで捌く事に。
首を落とすのにナイフでは刃が立ちません。
金切り鋏がその威力を遺憾無く発揮してくれました。
背開きにして内臓を一気に取り出す作戦。
内臓、すげえ量だなぁ。
背開き直後の様子。
しかも抱卵個体でした。
魚の卵はだいたい旨いと言う定理がある為、食べようか一瞬迷った後、今回は廃棄。身を食べて臭くなかったら、次回以降は内臓も試して行こうと思います。
多少は臭いはあったけれど、内臓や身自体には特段酷い臭みは感じられなかったので、これは期待が持てます。
身を取り分けてこの日の作業はお終い。
翌日、素材の味を見る為、まずは何の脚色もせず、シンプルに塩胡椒だけで焼いて食べてみました。
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おおっ!
存外旨い!
さすがに川魚なので多少は川の臭いがあるけれど、そんなに気にならないです。元々、鯉の身はクセがない上品な身質なので、これはしっかりと下味付けて調理すれば、和洋中どんな料理にも合わせられる可能性を感じました。
ただ、血合骨等の埋没骨もなかなか強靭なので、この辺りしっかりと処理するのは今後の課題としましょう。
となれば、以前からやってみたかったあの料理を試してみるしかありませんな!
茸本氏のブログで紹介され、都市河川アングラー達の間で一世を風靡しかけた「鯉のビール煮」を!
詳しい調理方法については茸本氏のブログで紹介されているので省きますが、一応手順通りに載っけておきます。
「国産アンデスメロン」
「横浜家系ラーメン新宿家高円寺店」
の様な実に入り組んだネーミングの催しでビール煮を提供させて頂く事となりました。
サク取りした鯉の身を食べやすい大きさに切り、バジル、ディル、塩、胡椒を塗して擦り込んでおきます。
裏面も同じく念入りに
微塵切りにしたニンニクと玉ねぎをオリーブオイルで低温でじっくりと炒め、香りを引き出します。その後、イチョウ切りにした人参とじゃが芋も投入し、充分に火を通します。
それとは別に下味を付けた鯉の身を皮目から火を通して行きます。
火が通ったらそれらを合わせて
ビールを注ぎます。
フレンチピルスだけでは足りなかったので、会場となったBarカナリヤさんで頼んだ黒ラベル生も入れます。
アクを取りつつ、全体的に火が通ったら塩胡椒とバジルとディルで味と香りを整えて出来上がり。
今回、仕上げの隠し味に白味噌と醤油を僅かに使用しています。
さて実食。
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これはなかなか面白い味!
ビールの苦味で適度に独特な風味付けがされているのを、オリーブオイルが綺麗にまとめ上げている感じです。これは日本の料理には無い味。肝心の鯉の身からは、臭いは一切無かったです。これは綺麗な水域の中でも当たりの個体だったのかもしれませぬ。
当日、ほぼ同じ場所で釣り上げた茸本氏の鯉は、少し臭いがあったとの事でした。下流の鯉が臭いを蓄えたまま川を上って来た可能性も考えられるとの事です。これは釣って食べてみるまで分からない部分ではありますが。
今回のビール煮、試作の段階ではヒューガルデンホワイトも試してみたのですが、最終的にピルスナーが1番合うのではないかと思い、本番では使用を控えました。
チェコの主流はピルスナーの筈なのでこのチョイスは間違ってはいないとは思いますが、実際のところはチェコで食べてみないと分かりませんね。「チェコでビール煮たべたよっ!」と言う方はご一報ください。
ちなみにこの日の催し、一緒に鯉釣りに行った筋肉氏は釣り上げた錦鯉を見事な煮付けにして提供してくれました。
錦鯉だからと言って味に差異は無く、真っ当に臭みの無い、旨い煮付けでした。
この会ではその後、海岸でシュールストレミング開栓の儀が極めて厳粛なムードの中で執り行なわれ、参加者達を次々と阿鼻叫喚の煉獄へと陥れていました。
開栓直後の様子。強烈な臭気を撒き散らしています。
開栓の儀を終え「無」を行う茸本氏。
その目に映る風景は希望か。或いは。
私も卵の部分を一口譲って頂きました。
感想は、物っっっっっ凄く腐敗臭と塩気の強いアンチョビと言ったところ。
強烈な臭いの奥に確かな旨味を感じます。ただ、そのまま食べるものではなく、一度塩抜きした上で、サンドイッチ等に挟んで食べるものなのだろうと言う確信を得ました。
今回のシュールストレミングが比較的臭いが弱いものなのか、熟成が進んでいなかったからなのか、海岸に強風が吹いていたから臭いが飛んだからなのかは分かりませんが、個人的にはそこまで酷い臭いではなかったと思います。腐敗臭も、排泄物系のそれではなく、玉ねぎが腐った系の臭いであった為、まだ耐えられました。
今後は、シュールストレミングのメーカーによる味の差異と熟成度合い、開栓場所の密閉度における臭気の違いについて研究を進めて行く必要性を感じましたが、自ら進んでやりたくはないので、どなたか試して頂けたらと思います。
と言う事で今回、念願叶って釣り上げるところから調理までワンストップで都市河川の鯉をやってみました。
水質の良い河川を狙って行けば、泥抜きの必要無く、泥臭さも然程気になる事なく、美味しく食べられる事が分かりました。
今後の課題は、ヒレ際の小骨の取り除き方と、さらなる調理方法を試して見る事です。
基本的には良くも悪くもクセが無い素直な身質なので、ある程度味付けでリードすれば様々な料理に合わせられますし、大きい個体なら身が大量に取れ、何より絶滅からは程遠い種類なので、気兼ね無く捕まえて食べられるのが大きな利点です。
身近に棲息している上に食パンで釣れるので調達コストも低いですし。災害時の貴重なタンパク源としてかなり有用だと思われます。
唯一気兼ねするべきは、世間の目だけだと言う点に留意しつつ、今後も釣って行きたいですね。
それではまた🎣